ロゼリアの黒い鳥


「……ティンカー、テイラー、ソルジャー、セーラー、リッチマン、プアマン、ベガァマン」

 突然、ロゼリアが童謡を歌い始める。
 町で子どもたちが口ずさむ数え歌。

「……シーフ? ……ふふっ」

 楽しそうに笑うロゼリアに、アリシアは何も言えない。

 あぁ、そうだ。
 きっとデボラの言う通りだ。

 ロゼリアにとっての唯一の救いは、こんな状態であることだ。
 自分の世界で生き、そして外の世界から切り離された状態が、きっとロゼリアを救ってくれる。

 そうであってほしい。

 この美しい人が、夢の世界から出ることなく、幸せなままで暮らせるように。

 そんな身勝手な願いを込めて、アリシアは浴槽から彼女を立たせてタオルで身体を拭く。
 部屋に戻ってからもロゼリアの歌は続いていた。


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