契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「お客さん、もしかしてテレビに出てる弁護士さんじゃない?」

 打ち合わせの件を思い出して苛々していた和臣はハッとして、彼に視線を移した。

「はい、そうです」

「やっぱりー。うちのカミさんがファンなんだ。今日帰ったら自慢してやろう」

 はははと笑う運転手に合わせて和臣は曖昧に微笑んだ。
 こうやって街で声をかけられるのにはもう慣れた。
 初めに顧問先であるテレビ局から出演依頼を受けた時はこんな風になるとは思っていなかったけれど、途中からは有名になることで、敵を作る可能性もあることは、十分にわかった上で今の生活を続けてきたのだ。
 それを今更後悔したりはしていないが、それでも自分のせいで渚が悪く言われるのは我慢がならなかった。
 いくら、飲みの席での戯言だと自分自身に言い聞かせても苛々は収まらない。
 和臣はやや乱暴に頭をぐしゃぐしゃとかいた。
 彼らが"女優や女子アナには負ける"と言った渚は、和臣にとっては、もはやなににも代えがたい大切な存在だ。
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