契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
 涼しい顔をしてさらりと毒を吐く千秋を祐介が微妙な表情で見ている。
 そんな夫には構わずに千秋は話を続ける。

「本当に、ガラリと変わったのよ。ほら昔はよく私が髪を染めてパーマをあてただけでも、ぐちぐちと言ってたじゃない? でも今は嫌そうに見てても『うちの夫はこれが好みなのよ』って言えば黙るのよ。ふふふ」

 千秋が綺麗に染めた栗色の髪を揺らして笑う。後ろで祐介が目を剥いて、

「千秋、お義父さんにそんなことを言ってるのか」

と呟いた。
 そんな夫をチラリと見て千秋はさっきと同じ言葉を繰り返した。

「だから、渚も結婚すればいいのよ。で、『調理師の学校に行くのも弁当屋を始めるのもぜーんぶ夫と相談して決めました』て言えばきっとなにも言われないわ。穏便に、渚のやりたい事ができるってわけ」

「そんなめちゃくちゃな……」

 渚はため息をついてすべてのカサゴをザルにあげた。そして刺身にする用の大きいものと、唐揚げにする用の小さいものにわけながら、キッチンペーパーで丁寧に拭いてゆく。
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