契約結婚のはずが、極上弁護士に愛妻指名されました
「私には結婚をして家を出た姉がおりまして、その姉に最近アドバイスをされたんです。自分のやりたいことをやりたければ結婚すればいいよって。どうやら父は結婚をして家を出た娘にはそれほどうるさくは言わないようで……」

 自分で考えたこととはいえ、今更ながら短絡的で自分勝手な話だと思い、渚は最後まで言うことができない。
 恥ずかしくて、頬が熱くなった。
 代わりに瀬名が、渚の言葉を引き継いだ。

「だから音川さんとお見合いをしようと思ったのか」

 渚はいたずらが見つかって叱られている子供のように、しょんぼりとしてうつむいた。

「はい。しばらくの間、結婚してるフリをしてもらおうと思いました……」

 最後の方は蚊の鳴くような声になってしまった。
 きっと瀬名は自分のことをなんて身勝手な奴なんだと、驚き呆れたに違いないと渚は思う。とても瀬名の顔を見ることなどできなくて、渚は膝の上で組まれた瀬名の大きくて綺麗な手を見つめる。
 こんなくだらない話はやめにしてもう帰ろうか、そう渚が思った時。
 瀬名の意外な言葉が降ってきた。
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