エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「なんで、会ってすぐに言わないんだ」
彼が最初に発したのは、誰の子か疑うような言葉ではなかった。
「わかってたら長時間歩かせたりしなかったのに。大丈夫か?」
「えっ……あ、平気」
彼が見せたのは、私が予想した悪いものと良いもの、そのどちらでもない反応で私は一瞬返答に戸惑う。
彼は膝をついたままだから、少しだけ私よりも目線が下だ。いつもと違って彼が下から見上げてくる。その目に、私を厭うようなものも軽蔑するようなものも感じられなかった。
寧ろ、高揚しているようにも見えるのは、私の願望の表れだろうか。彼の手が、私の頬を撫でて、首筋、肩へと順に下りていく。優しい手つきに、緊張のせいかいつのまにか強張っていた体の力が抜けた。
その手は、一層優しく、そうっと私の下腹まで下りてくる。
「ここに俺の子がいるの?」
ふんわりとお腹の上に手を当てて、彼は言った。
「あっ、まだ、多分、なんだけど」
「まだはっきりわからない?」
彼の言葉に返事をしながら、私はほっとしてぼろぼろと涙を零していた。少しも疑わなかった。全部信じてくれた。
そのことで、心の緊張も解けてしまった。