エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
恋の火種
しばらくベッドの上で抱き合っていて、充分にお互いの覚悟が決まったあと。彼が、ぽんと私の頭に手を置いた。
「それじゃ、まずは雅の実家に連絡をしないといけないな。病院には、まだ?」
「行ってないです。検査薬で陽性が出たらと思ったけど、出なくて……でも生理が止まったままで、今までこんなことなかったから、焦ってしまって」
落ち着いて考えれば、まだ言う必要はなかった?
だけど、ひとりで考えると焦燥感でいっぱいになってしまって、平静でいられなかったのだ。
彼は、私の言葉を聞いて数秒考えこんでいたけれど、直に頷いて何かを決めたようだ。
「わかった。やっぱり雅の実家に、早めに連絡しよう」
「えっ、でも」
それには、ちゃんと妊娠が確定してからの方がいいのではないかと思ったのだが、彼の考えは違った。
「先に顔合わせか、せめて電話だけでも挨拶をさせてもらって、それから妊娠がわかったということになれば、雅も報告しやすいだろう。もちろん、その時は俺も一緒に言うけど」
確かに、いきなりできちゃったと報告するのは言いづらい。うちの両親は、『授かり婚』という言葉も多分知らないくらい、結婚は順序だててあるのが普通で授かり婚なんていうのはかなりの特例だと思っていそうだった。
最近ではそんなこともない、ということをある程度わかっていても、自分の娘がとは夢にも思わないだろう。