エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「いや?」
「そんなわけありません」
それだけは頭を振って、はっきりと答えた。産みたいと思っているし、それを反対されなくて心底ほっとした。
この状況であっさりと受け入れてくれる人なんて、そうそういないだろう。ましてや、結婚しようとすぐに結論を出してくれたのは、私を不安にさせないために違いない。
「うれしい、です」
うれしい。それは本当だ。だけど、申し訳ないのも本当で。
「よかった」
優しく微笑んでくれるほどに、胸が痛くなる。喜びと同時に存在する、苦い感情。恋だけではない、責任感がそこに生まれるのは、こうなったからには仕方がないことだ。
「……ぎゅって、してもらっていいですか」
彼に向かって、軽く両手を広げて強請ってみる。すると、彼はすぐに嬉しそうに破顔して、私を強く抱きしめてくれた。
その温もりに目を閉じて、「ああ」と実感する。
――好きなんだ。
私はすでに、彼のことが好きなんだ。
だからこそ、もっと純粋に喜べたらよかったけれど。
「必ず幸せにする。だから心配しなくていい」
庇護し、甘やかす彼の言葉に私は苦笑する。どこまでも私を優先しそうな彼にこそ、幸せになってほしい。
「一緒に、幸せになってください」
まだ、始まったばかりの私たちだけれど、あなたが私にくれた分、それ以上に私もあなたを幸せにしたい。そう思えた。