エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「雅にとっては、急なことでも、俺にはそんな感覚はまったくない。だからつい、気が逸ってしまうのは、悪いと思ってる。でも俺は、もう雅を逃がす気がないからな。だから言うんだ。雅の体調はすっきりしないままだし、ひとり暮らしさせるよりそばにいてくれた方が安心できる。それなら、きちんと籍はいれておきたい」
「大哉さん……」
そこまで、彼は私から一瞬たりとも目を逸らさなかった。彼は、確かに少し強引だ。でも、それを嫌だと思ったことはない。
しかも彼は、最初から責任などは関係なかったと言ってくれた。妊娠がなくても結婚したいと思ってくれていたのだ。
「雅、俺と結婚してほしい。ずっと、好きだった」
熱のこもった目に射抜かれて、こんなにも言葉を尽くされてどうしてまだ不安など抱けるだろう。
しかも、状況は確実に整えられていて、逃げるのは大変そうだ。もし、逃げたいのなら。
――逃げたい?
頭の中で、自分に問いかける。答えは『否』だ。彼が私に向けてくれる気持ちに、私は心を救われた。これからは私も報いたい。そうしてお互いを想い合えたら、それもまた、恋ではないだろうか。
彼となら、結婚した後でもずっとそんな関係でいられる気がした。夫婦になってからでも、恋をしていられる。彼となら。
「……はい」
ようやく頷いた私に彼はうれしそうに微笑んだ。私の頭を引き寄せて、唇にキスをする。目を閉じて応えると、より一層深く唇が重なった。
とろけるような甘いキスに溺れながら、彼のくれた言葉が頭の中で繰り返される。
改めて伝えてくれたプロポーズの言葉が、胸の奥に小さな火種となって私の心も体も温めていた。