エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
彼女は知らなくていい話【大哉side】
◆◇◆

 伊東直樹という大学OBに、二十歳そこそこのかわいい彼女がいる。
 それを知ったのは、彼がいちいちその彼女を見せびらかすように連れてくるからだ。別に問題はない。
 ベタ惚れなんだな、なんて話になっていたが俺は知っている。彼は、バレないようにはしていたがちょいちょいとあちこちでつまみ食いをしていた。

 遊びで済みそうな相手を選んではいたようだが、それでも表立って一番大切にしている本命彼女の存在を、やっかむ連中は少なからずいた。
 偶然その現場に居合わせたのは、OBと現役生で集まってバーベキューをした日だった。

「えーっ。伊東先生に家庭教師してもらって、そんなとこにしか入れなかったんだ」

 嘲笑う女の声がして、共同炊事場の方へ近付く。ふたりの女に相対しているのは、ちょっと小柄でまだ高校生といっても通じるくらいに、幼い顔立ちの女の子だ。

「あはは、私、どうしても本番とか弱くて」

 明らかに馬鹿にされているのに、彼女は笑って受け流している。

「あ、それよく言うよね、落ちた子とか」
「ねえねえ、伊東先生となんで付き合ってるの?」

 あからさまな侮辱を笑い話のようにぶつけて、それで彼女が泣いて逃げだすのを狙っているのだろう。
 これはキツいだろうなと助け船を出そうとした、その時だった。


< 117 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop