エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

「……大哉さん」

 思い切って、口を開いた。妊娠したかもしれないと勘違いした時、私が一番に思ったことを、今ちゃんと伝えるべきだ。

「私、妊娠したかもって思った時、そのことよりも大哉さんにこのことを知らせるのが怖かった」

 そう言うと、彼は悲しそうな顔をする。

「俺が信じると思わなかったから?」
「それもあるけど……責任とかそんな言葉関係ない状態で、ちゃんと恋がしたかったから」

 なにが言いたいのか、うまくまとまらなくて一度そこで言葉を区切る。彼は、黙って待っていてくれた。

「あなたに、責任とかで結婚とか決意させたくなくて。ちゃんと恋愛期間を置いて、ふたりで考えたかったから」

 優しい彼は、きっと結婚しようと言うと思っていた。だけどその妊娠が勘違いだったことがわかったのに、彼はその気持ちは変わらないと言ってくれている。

「雅」

 迷う心も、彼にはお見通しだったのだろう。私を膝に乗せたまま、私の頬に手を添えて顔を上げさせる。目を逸らせないようにさせてから、彼は言った。

「俺と一緒にいるのは嫌?」
「そんなことない、でも、あんまり急に色々なことが変わりすぎて、頭がついていかなくて……大哉さんは、本当にこのまま結婚していいの?」

 確かに両親への説明は必要になるが、一度白紙にすることはまだできるのだ。だけど婚姻届を出してしまったら、そうはいかない。
 しかし、彼は私の問いかけに迷いもなく頷いた。


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