エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
彼女以外の女と楽しんでいただけのような、今までの火遊びとは違うと目を見ればわかった。病院内でも人目を忍んで抱き合って、結局誰かに目撃されて噂になっている。以前は、勤務中に院内でなど、そこまで節度のないことはしていなかった。
女の方も、恋人がいるとわかっていても会いたい、だけど奪い取るほど悪役にはなりたくない。叶わない恋に酔う悲劇のヒロインぶりには反吐が出る。
彼女を悪役に仕立てて、自分たちの恋に酔っているのだ。
――それなら、俺がもらってもいいだろう。
歓送迎会のある飲み会に向かう途中、伊東先生とふたりで歩いている時に、さりげなく話を振った。
『後藤さんは、元気ですか。最近見ませんが』
『あー、今日はこの後会う予定になってんだけどさ。多分、駅で待ってんじゃないかな』
知っている。以前のように店まで呼びつけることをしないのは、幼馴染のあの女と会える可能性があるからだ。
使用頻度の少ない、一般外来のフロアとオペ室を繋ぐ階段の踊り場でふたりはよく話をしている。