エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「理由はあるが、まずは後藤さんに俺が連絡を取りたがっているってことを伝えてほしい。それで了承がもらえたら、俺の連絡先を彼女に教えてくれたらいい」
これなら、後藤さんに決断を委ねる形になるし、永井さんも断る理由はないと思った。後藤さんの性格を考えるに、連絡が欲しいと言ってる相手をそのまま無視はできないはずだということも計算に入っている。
しかし、永井さんはすぐには首を縦に振らなかった。
「……平常時なら、別にそれで問題ないと思うんですけどね」
彼女は難しい顔を浮かべて、パックコーヒーのストローを口に咥える。
「……伝えてさえくれたら、彼女は断らないと思う」
俺がそう言うと、彼女は目を鋭くさせた。
「もしかして、〝金曜夜〟にあったことと関係ありますか」
その言葉は、つまりもう後藤さんが永井さんにある程度のことを話したのだと理解する。ただ、それがどこまでなのかわからない。
「目の前で見ていた。ひとりにできなくて一緒にいた」
知っていればある程度の推測ができ、知らなければどうとでもとれる言葉を選んで口にすると、永井さんの表情は嫌悪感を浮かべた。
ただし、俺に対してというわけではなさそうだ。
「あの男、幼馴染かなんだかにたぶらかされて、燃え上がって馬鹿じゃないの。いちゃついてる時の馬鹿面、見れたもんじゃなかったわ」
どうやら彼女もどこかで見たらしい。あの男が、理性を失くすくらい燃え上がっていたのは間違いない。