エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「高野先生が、どういうつもりで雅に会いたいのかわからないけど」
イライラを隠さない荒っぽい仕草で、永井さんは飲み干したパックコーヒーをくしゃりと握りつぶす。
それをゴミ箱に放ると、俺を振り向いた。
「傷心中の子に、むやみに誰か近付けるのもどうかと思うので、できません」
互いに、仕事の隙間時間での短い会話だった。それ以上の時間はなく、引き留めることはできなかった。
もちろん、それで諦めるわけはないのだが。
二度目は彼女の仕事終わりを捕まえた。元々、ちゃんと話をするには人に聞かれるような場所ではしづらい。名刺にプライベートのスマホの番号とメッセージアプリのIDを記載したものを渡した。
後藤さんに繋いでもらうためでもあったし、永井さんと話をするためでもあった。おそらくこのままでは、すぐには繋いでもらえないだろう。
俺は、気が急いていた。長く彼女をひとりにしておきたくなかったのと……色呆けから目を覚ました伊東先生がふたたび彼女に接触しようとするのを、避けたかった。まして、俺が関わったことで伊東先生が意地になる可能性がある。
昨年ぐらいから、敵視されているのはわかっていた。