エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
一度目はスルーして、かけ直しもしなければそれっきりだった。メッセージもなにもない。もしかしたら、間違えたのかもしれないと思い気にしないようにしていたが……。
「二回も間違えるって、あるかな?」
鳴り続けるスマホを手に、私は困惑していた。
もちろん、出るつもりはない。だけど、着信拒否などは返って刺激すると思い、今も登録はしたままだ。その方が、伊東先生からだとわかっていれば出ずに済む。
大哉さんと同じ病院ということもあってあからさまな拒絶もしづらい。大哉さんは伊東先生のことを私には一切言わないけれど、サチからちらっと聞いた限りではあれからもあまりいい関係ではないようだ。
だからこそ、これ以上険悪な空気になって大哉さんに迷惑がかかるのは避けたかった。
伊東先生からの着信の理由はわからないまま、迎えた翌週の水曜日。今日は梅雨の晴れ間で、少し蒸し暑い。
自分の親に男の人を紹介する。それがこんなにも緊張するものなのだと初めて知った。
私の実家は、都内から一時間ほど車を走らせた町にある。予定よりも早く、朝の十一時に着いたけれど、今日はお店は休みだから大丈夫なはずだ。
近くのコインパーキングに車を停めて、五分ほど歩くと見えてくる。赤いレンガ造りの古びた喫茶店が私の実家だ。二階と三階が住まいになっていて、店舗は一階のみ。
「小さい頃は祖父と祖母がやっていて、母が手伝ってたんです。でも途中から祖父の体調が悪くなって、父が思い切って会社辞めて引き継いだんですよ」
私が成人する前に、祖父も祖母も亡くなってしまったが、今は両親が夫婦でやっている。