エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
両親に大哉さんを紹介し、大哉さんにも両親がそれぞれ名乗って挨拶をした後、父が入れてくれたコーヒーと、店で出している一番評判のいいロールケーキを食べながらしばらくの間雑談をした。
ほどなく打ち解けたところで、大哉さんが私との結婚の意志を両親に伝えてくれたのだが……彼が言っていたように、父は途端に豹変した。
といっても、彼に殴りかかったわけではない。片手で両目を覆い、俯いたかと思ったら肩を震わせ始める。
「うっ……うっ……雅がもう嫁に行っちゃうなんて」
泣き真似か、もしくはちょっと涙ぐむくらいかと思ったら、目を覆った手の指の隙間から、ぼたぼたと涙の雫がこぼれてくる。
これ、ガチ泣きだ、とびっくりした。父は物静かな人だが、こんな風に泣くところも見たことがなかった。
殴られる、と覚悟を決めていた大哉さんは、これほど大泣きされる覚悟はなかったらしい。落ち着いて見えるが、父を見る目がおろおろと狼狽えているのが私にはわかる。
「もう! ちょっとお父さんったら。ごめんなさいねえ、大哉さん。気にしないでね、うちはこののほほん娘をあなたみたいな人に守ってもらえたら安心できます」
「のほほん娘ってなによー」
「のほほんとしてるじゃないの。この子ったら、高校受験や大学受験もさぼるわけじゃないんだけど、どこかのんびりしててねえ。見てたこっちがヤキモキしたわよ」
「う、うるさいなー!」
母は、泣いてる父を放置して自分のペースで話し始める。しかし、うっかり受験の話になりそうで、私は慌てた。
だって、受験生の頃に家庭教師としてバイトに来たのが、伊東先生だ。その話題は、もうぶり返したくない。