エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
***

 母とふたりで、テラスから庭に出る。大哉さんは、父とふたりテーブルで向かいあっている。彼の方から、私のことを聞かせてほしいと父に話しかけていた。

「モッコウバラ、育ったねー」

 残念ながら花は終わってしまったけれど、蔓はしっかりアイアンアーチにくるくると巻きついている。

「あのフラワーセンターのやつに負けてないでしょ?」
「お母さん、なんで張り合うの」

 それは、私が大哉さんと言った時に撮った画像のことだ。あの時のメッセージもだけど、なんでそこで争うのか。

 くすくす笑いながら目についた雑草を抜き始めた母の横で、私も同じように手を伸ばす。何年ぶりだろう。高校生ぐらいまでは、時々手伝っていたけれど。

 お店の窓からお客さんに楽しんでもらえるように、造園業者が入って整えてくれているが、それだけでは追いつかない。
 特に初夏頃から秋までは抜いても抜いても、雑草が生えてくるのだ。

「庭のお手入れ、大変じゃない?」

 私でも、屈んでやっていると数分もすれば腰が痛くなってしまう。

「大変よー。いつまでできるかしらね、お父さんもお母さんも」
「無理しないで全部業者に頼んだら?」
「馬鹿ね、どんだけ高いと思ってるのよ」
「でも……」

 詳しい金額は知らないけれど、結構高いのは知っている。

「ま、手が回らなくなったらモッコウバラだけ残してあとは処分するかもしれないわ」

 子供の頃からあるものがなくなっていくのは、どこか寂しい。そして、自分にも多少の責任はあるのだ。

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