エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 大哉さんのご両親には、その日の夜に彼がパソコンのビデオ通話で連絡をした。以前にも、電話でご挨拶だけはさせてもらっていたが、今回はちゃんと顔を見せたかった。

 彼のご両親は九州に住んでいて、すぐに会いに帰れる距離でもないのだ。おふたりともまだお仕事も現役で、忙しいこともあり無理に会いに来なくていいと言ってくれたのだ。
 とても静かで穏やかな人たちだった。前回は声だけだったのが、直接ではなくても顔を見せて会話ができて、少し安心した。

 会わないまま一緒に住むことになったこと、婚姻届のことも申し訳ない思いで説明すると、逆に恐縮されたくらいだ。

『大哉は、滅多にわがままは言わないくせに一度言い出したら絶対聞かないのよ。雅さん、ごめんなさいね。どうしても嫌なことはちゃんと言っていいのよ』

 随分と念押しされたけれど、呆気なく結婚のお許しをもらうことができたのだった。

 その週の日曜日。土曜は彼が当直だったため、起きるのを待ち夕方から一緒に役所へ行った。閉まっていたが、休日用の窓口で無事に私たちは婚姻届けを提出した。


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