エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

「お祝いに何か食べに行こうか」

 駐車場まで歩きながら、暗くなりかけの空を見る。残念ながら、ビルに隠れているのだろう。あの星は見当たらなくて、隣の彼を見上げる。
 優しく弧を描く彼の目に、きゅっと心の奥を掴まれたような感覚になる。幸せなのに、苦しくて切なくて、もっともっとくっついていたくなる。

「お祝いより、家がいいな」

 恥ずかしいよりも、欲求の方が強かった。

「もっとちゃんと、実感したい」

 途端、彼の目に優しさ以上の熱が灯る。

 停めてあった車に乗ったかと思えば、すぐに運転席の彼に抱き寄せられた。両手で頬を包まれて、まずは唇以外の場所にキスを受ける。額、瞼、頬。早く唇にキスしてほしくて、焦らされているのは私のはずだ。なのに、肌にかかる彼の吐息はとても熱い。

「雅」
「ん……」
「今日から、俺の妻だ」

 はい、と返事の声は彼の口の中に飲み込まれる。溺れるような口づけを受けながら、私は今夜名実ともに彼のものになったのだと実感した。



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