エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
【話したいことがある】
伊東先生からだった。運悪く、即座に既読をつけてしまったことを後悔した。
――まあ、既読スルーも未読スルーもそんなに変わらないけど。
すぐにアプリを閉じようとして、それより先に次のメッセージを受信する。
【雅は、高野に騙されてる】
――騙されてる、って?
そのメッセージを伊東先生が送ってきた意味がわからず、私は瞬きをしてどう対処するべきかしばらく迷っていた。
スマホ画面を見つめていたが、その後はメッセージが続くことはない。
騙されてる、ってなんのことを言ってるんだろう。それに、どうして伊東先生が私にわざわざ言うのかわからない。
よくわからないが、返事をする必要はない。
そう判断して、スマホをバッグに入れ更衣室を出た。
電車に乗って、家に帰るまでの間で大哉さんからの連絡はなかった。
リビングのテレビをつけて、ダイニングテーブルでひとり夕食を食べていると、ついつい頭をよぎるのは伊東先生のことだ。テレビの音など、ほとんど耳に入らない。
どうして、今になって。
サチが、伊東先生は大哉さんを敵視していると言っていたけど……もしかして、もう私と大哉さんが結婚したことが耳に入ったのだろうか。
大哉さんからわざわざ言うつもりはないと言っていた。だけど、総務には届けなければいけないからそのうち耳には入るだろう、とも。