エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
そのままソファに顔を突っ伏し、手のひらでバンバンと座面を叩く。
「うー……」
この感情は、なんだろう。伊東先生にもう未練なんかさらさらない。それならもっと、さらりと聞き流すこともできたはずなのに、神経を逆なでるような言葉を言われて、感情的になってしまった。
「ああ……カッコ悪い。や、でも、ちゃんと言うべきことは言えた……」
声を荒げてしまったことは後悔しているけれど、ちゃんと言い返せた。大丈夫だ。
「あ! それと着拒だ」
パッと顔を上げてスマホを掴む。あんな啖呵を切ったのだから、拒否設定はしておかなければならない。
着々とメッセージアプリと通話の着信拒否を設定した。
――大丈夫よね?
最初は、拒否なんてしなくても向こうからかかってくることなどないと思っていたから、気にしていなかった。
だけど、何度か着信が入ってからは、敢えてそのままにしていた部分もある。拒否してしまえば、向こうの動向がわからなくなるからだ。
それに、拒否されているとわかったら、伊東先生を余計に刺激するのではないかと思ったから。
『高野先生の彼女を病院で見たって直樹に言ったら、なんだか様子がおかしくなった』
私に未練なんかないはず。だから、拒否されたとわかったら、プライドの高い彼ならもう二度と接触してこないはずだ。
そう思っても、どうしても不安の種が消えない。