エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
彼から再度連絡があったのは、翌朝の七時だった。
《今から着替えて帰るよ。主治医に連絡ついたから交代した》
あくびを噛み殺すように、語尾は口調がゆっくりになっている。
「お疲れ様でした。大丈夫でしたか?」
私は既に起きて着替えていた。電話で話をしながら寝室のカーテンを開ける。ここ数日晴れ間が続いたので、もうじき梅雨明けかと思ったのに今朝は朝から小雨が降っていた。
《大丈夫、特に急変することもなくて、仮眠も取れた。夕べの夜食、残してある?》
「実は、結局作らなかったんです。朝食なににしましょう。パンとご飯どっちがいいですか?」
《そうだな、じゃあ、今日はパンで。雅のバターオムレツが食べたい》
「わかりました。気を付けて帰ってくださいね」
やっぱり、疲れているんだろう。どことなく甘えるようなニュアンスで言われて、くすくすと笑いながら通話を切った。
これから着替えて、病院を出て……だと、なんだかんだ一時間近くはかかるだろう。大きな病院だから建物も敷地も広い。移動するだけで結構な距離がある。
キッチンへ行くと、まず卵を室温に戻すために冷蔵庫から出してボウルに入れた。付け合わせの野菜はトマトとブロッコリーでいいだろうか。
朝食の材料を確認していて、肝心のパンがないことに気が付いた。
「あー、昨日でなくなったの忘れてた」
スマホで時間を確認する。彼が帰るまでにはまだ間に合う。考えた末、これから駅前のパン屋まで買いに行くことにした。