エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
手首を持ち上げられたままで、肩から傘の柄がずり落ちそうになる。
「あ、離して、傘が」
そう言うと、彼は案外あっさりと私の手を解放してくれた。私はバッグの中にスマホを戻して、それから落ちそうになっていた傘やパンの袋をしっかりと持ち直した。
「こんなとこで、なんでこんなに買い物してんだ」
私のマンションがこの駅周辺ではないことを知っているから、不思議に思ったのだろう。伊東先生がパンの入ったエコバッグを見ながら言って、それから険しい顔で私を睨む。
この先に大哉さんの、今は私の家でもあるマンションがある。私がこれからそこに帰るところなのだと彼は察したのだろう。
「……もう一緒に住んでるって本当だったのか」
「な、なに……」
「結婚したって? 随分早いよな。交際何日だ?」
意地悪い笑みを浮かべているが、目は笑っていなかった。またあらぬ疑いをかけられているような気がして、言い返そうとしたが一度踏みとどまった。
彼らの調子に合わせることはない。
何もこの人に弁明する必要などどこにもないのだ。
深呼吸をして、強く彼を睨みつける。
「伊東先生には、関係ないじゃないですか」
すると、彼は一瞬たじろいだ様子を見せたけれど、すぐに眉を顰めて目を逸らした。