エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「伊東先生……自分が、傲慢なこと言ってるって、わかってる?」
「え?」
静かな声で問いかけると、彼の表情が固まる。それから次の言葉にぎくりと頬を強張らせた。
「今日、こうやって私と話したこと、沢田さんに知られたらどうするの?」
「なんで雅があいつの名前……」
「それはどうでもいいでしょ。私だって情報くれる人くらいいるよ」
うっかり沢田さんの名前を出してしまって失敗したが、強気で言い切る。本当はサチと大哉さんしかいないけれど、それは今はどうでもいいのだ。
「ねえ、どうするの?」
ぐっと言葉に詰まるあたり、なにも考えていなかったのだろう。伊東先生は、捨てたはずの私に手を伸ばし、再び天秤に乗せようとしているようなものだ。
たとえそれが、大哉さんへの対抗心からだとしても、女からすればたまったものじゃない。
「そうやって今度は彼女を傷つけるの?」
私が傷ついたみたいに、彼にとってはそんなこともどうでもいいのだろうか。それとも見えてもいないのか。
「私ね。もう別にいいかと思っていたけど、こうして会えたからやっぱりちゃんと言おうと思うことがある」
背筋を伸ばして、真っすぐ伊東先生を見つめて言った。