エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「二股かけられたのは悲しかった。発覚した時、私に言い訳するより私の存在を彼女に知られることを避けたのがわかって悲しかった。だけど、それはもういいです。心変わりしたのは仕方ないし、天秤にかけてどっちかが重くなるのも仕方ない。でも、高野先生と一緒にいるようになって、わかったことがある」
大哉さんの名前が出て、伊東先生の眦がきつくつり上がるのがわかる。やっぱり、彼にとって大哉さんが鬼門なのだ。
だけど、引き下がりたくなかった。
「一番、傷ついたのは、あなたが私の気持ちを全部無視していたから」
「そんなわけ」
「あるよ。私が会いたいって言っても、適当に流して放置してた。私なら、放っておいても平気だと思ってたんでしょう? あなたが幼馴染の彼女と再会して夢中になっている間、私がどう思うかなんてなにも考えなかった。いつのまにか、私はあなたの付属品かなにかになってた」
伊東先生が、唇を噛みしめて俯いた。
彼も、そこまでとは思ってなかったのかもしれない。軽い気持ちで浮気をして――もはやこれは浮気ではなく本気だったのだろうけれど、私が傷つくとかまで深く考えていなかったのだ、きっと。
だったら、聞いてほしい。私は好きだったし傷ついた。もう、次の人にはそんなことをしないようにしてほしい。
「大哉さんといると、気持ちは一方的じゃないって思える。お互いの気持ちを思いやって、相手を尊重する。私が傷つかないように、ずっと気遣ってくれたから私もそうしたい。そういう関係が本当は大事なんだと思う」
多分、誰かと一緒にいるって、長くなると段々と当たり前のように感じてしまうのかもしれない。
愛情を保ち続けるには、お互いの努力が必要で、お互いに相手の気持ちを忘れたらいけない。
大哉さんとなら、そんな風にできると思った。何年も想い続けてくれた人だから。私も、忘れ去られる寂しさを知っているから。