エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 だから、きっと思いやれる。ふたりで幸せになれると思った。

「大哉さんに、とても大事にしてもらってます。幸せになれると思ったから、短い間で決断できた。そして今、とても幸せ。だから、今はもう伊東先生のことも怒ってないです」

 言いたかったことを、全部言えた。

 そうしたら、さっきまで感じていたモヤモヤが綺麗になくなって、すっきりとした気持ちになる。
 今度こそ、彼の前から立ち去ろうともう一度お辞儀をしようとした時、伊東先生が「ハッ」と小馬鹿にした笑いを浮かべた。

「だから、雅はダメなんだよ。騙されやすいから」

 このどこか荒んだ雰囲気は、別れたあの夜の彼を思い出させる。

「……なんですか」
「雅が傷つかないように? 馬鹿だな。あの店に俺らがいるってわかってて、高野がわざとお前を連れて来たって言っても? お前を傷つけて、傷心のとこに付け込む気満々だったんだよ」

 ――どういうこと?

 彼が送って来たメッセージの内容が頭に浮かぶ。あんなの、私の反応を引き出す手段じゃなかったの?
 今の言葉で、伊東先生の顔も周りのことも、まるで目に入らなくなった。


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