エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 家に帰ってから、まずは彼にシャワーを浴びてもらって落ち着いてから今日の顛末を聞いた。
 傘は、病院を出る時に更衣室に忘れてきてしまい、その時は小雨だったから走ることにしたという。

 取りに行けばよかったのに、と思ったけれど、私が雨の中パン屋の近くで待っているからと、走ってきてくれたのだろう。だからこそあの場に間に合ったのだ。
 ソファに並んでこの話を聞いている間、彼の腕はがっしりと私の腰を抱いていた。

「……それで。本当に、あの日はわざとだったの?」
「半々ぐらいかな。あのふたりが会う約束しているのは偶然聞いて、あの店でよく会ってるのも知ってた。ただ、途中で予定変更されたら俺にはわかりようがないし」

 こんな風に、抱きしめられながら聞く懺悔には、あまり意味がない気がする。だって、私がこの腕から出る気がない限り、許す一択しかないのだ。
 というか、もうそれほど怒っていない。
 伊東先生の言ったことは、事実であっても真実ではない。

「傷ついたところに付け込もうとした?」

 伊東先生の言い方でそのまま彼に投げかけたのは、ちょっとした仕返しのようなものだろうか。
 あと、やっぱり彼の口で違う理由を聞きたかった。

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