エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
愛が叶う日
***

 
 結婚式は一年後の初夏に決まった。
 ふたりで式場やホテルのウェディングプランを見て、結婚指輪を探して、時間をかけてゆっくりと準備を進めた。

 両家の親は、親戚や友人、仕事の関係者も呼んで賑やかにすればいいと言った。けれど私は近しい身内だけを招待して、挙式と食事会のみのこじんまりとしたものがいい。

 元々、あまり目立つのは好きじゃないし、伊東先生に振り回されるわけではないけれど、会社関係者を呼べば彼も招待せざるをえなくなると思ったからだ。
 大哉さんと彼は、同じ外科医なのだ。他の医師を呼んで彼を呼ばないというわけにはいかないだろう。

 一年の間に仕事と結婚式の準備と同時に、医療事務の勉強も続けていた私は、無事認定試験に合格した。本番に弱いというのはもう今さら慣れっこの習性なので、通常の二倍の量を勉強してしっかりと準備していった。

 それでも、試験当日は最初頭が真っ白になっていたが、大哉さんが言ってくれた言葉を思い出して、どうにか軌道修正できたのだ。

『失敗しても、何度でも挑戦すればいい。そう考えたら、試験当日も予行練習も変わらないだろ』

 確かにその通りだと思ったら、身体と頭の緊張が解けてくれた。
 医療事務の資格が取れた後も、これまでの会社にまだ勤務している。
 ある意味自分に自信を持たせるためのものでもあったから、いつか必要な時に活かせたらと思っている。

 そうして穏やかに月日は流れて、五月中旬。
 よく晴れた日だった。

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