エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「泣いてるのを見て喜ぶなんて」
「うれし涙だってわかるから、喜んでるんだ」
彼は、私の上半身をぐるりと囲った方の手でスマホを弄っている。多分また、結婚式の画像を見ているのだ。
「たしかにそうですけど」
私は拗ねながら、スマホのスケジュールアプリを開く。仕事の内容やサチとの約束を書き込んでいるのをチェックしながら、私はあることに気が付いた。
……あれ?
画面を横にスライドさせて、先月と今月を行ったり来たりする。この行為に既視感があったが、指が止まらない。
崩れていた体調が戻ってから、生理は以前のようにきっちり二十八日周期で来ている。
そして今月、あるべき場所にハートマークがない。
「……あれ?」
ドキドキしながら、何度も往復する。以前は、緊張と不安の中でいっぱいだったけど、今は違う。
――もしかして。
何度確認しても、先週が生理予定日でハートマークが付くはずの日だった。今日できっちり、一週間が過ぎている。
「雅? どうした?」
膝の上で、急にそわそわしはじめた私に気付いた彼が、私の顔を覗き込む。
――どうしよう。ちゃんと確かめてからの方がいい?
そうは思っても、気持ちが逸って止められなかった。
「……大哉さん」
「うん?」
「あるべき場所に、ハートマークがありません」
私のスケジュール帳のハートマークの意味を知っている彼は、ぴたっと目を見開いたまま動きを止めた。