エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
そう思いつつ、包まれるように抱かれていると暖かくて気持ちよくて、抜け出す気にもならない。目を塞がれて微睡んでいると、とりとめもなく今までのことが思い出されたのは、やはり今夜が初夜で特別な夜だからだろうか。
この腕の中にいることが、こんなにもあたり前になるなんて、一年前は思いもしなかった。今思えばあの一か月余りは急展開の中にいた。
たった一晩しか関係していなかったのに、子供が出来たなんて勘違いして大慌てしたんだった。
その時のことを思い出してくすりと笑うと、目を覆っていた彼の手が少し離れた。
「雅?」
「ごめんなさい、思い出し笑いです」
私が言うと、また「早く寝る」と手で瞼を閉じさせられて、今度はゆっくりと髪を撫でている。これではまるで子供の寝かしつけのようだ。
――こども。赤ちゃん、かあ。
またうとうとと微睡ながら、なんとなく下腹部を意識する。あの時はとても慌てたけれど、今なら何の憂いもなく喜べるのに。
――いつか、欲しいな。
大哉さんに似た男の子がいい。いや、女の子でも可愛いかも。なんて、今言えばまた眠れなくなりそうだから、口には出さないけれど。
今度は過去ではなく未来に想いを寄せながら、私は彼の腕の中で眠りについた。
END


