エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
特に何もすることがない休日は、ただぼんやりとしているうちに過ぎてしまう。直樹さんからの連絡を待つということが無ければ、随分と精神的に自由だ。
――私ばかりが合わせて来たから。もうそんな必要もないんだと思えば、悪いことではない。
そうやって自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えようとする。休日で助かったと思う。やはりふとした時に考え込んでしまうのは自分でコントロールできなくて、この状態で普段通りに仕事ができたか自信がない。
翌日の日曜、コーヒーを淹れようとしてお揃いのカップを見つけ、迂闊にも鼻の奥がツンとして咄嗟にぽんと手を打った。
「そうだ。断捨離しよう」
ドット柄の青いカップを目にした途端、それを使っていた直樹さんの姿が記憶の中から引きずり出されてきたからだ。
服を買ったときの大きめのショップバッグを出してきて、そこに青のカップを入れる。それからちょっと考えて、結局片割れで私が使っていたオレンジの方も捨てることにした。引き出しを開けてペアの箸も一緒に入れる。
ペアではないカップにコーヒーを入れて、テレビ前に置いてあるローテーブルの上に置くとすぐに部屋中を確認してまわることにした。思い立ったが吉日だ。