エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 ワンルームマンションだからそれほど広くないし、収納も少ない。直樹さんの置いていったものを集めるのに、一時間もかからなかった。

 彼がここに泊まる時に使っていたルームウェアや、髭剃り歯ブラシ、あと着替えの服が何枚か出てきた。丸めてぽいっとしてしまいたいが、陶器もあるし分別してちまちま捨てていくしかない。

 それから、まるで過去を掘り起こすみたいに色々なものを見つけた。クリスマスに買ってくれたお財布や誕生日のネックレス、それらはあまりにも思い出がはっきりとしていて、少しずつ彼の熱が冷めていたことに改めて気付かされる。

 去年の誕生日は、忘れられていて。忙しいから仕方がないと思っていたけれど、間に合わせのように用意してくれたプレゼントの腕時計は、可愛らしいけれど私の好みとは違ったものだった。
 その日、彼の部屋に行ったとき置いてあった雑誌の通信販売の広告ページで、まったく同じものを見た。その時は、忙しいんだなくらいに思ったけれど……よくよく思い出せば、最初の頃は忙しくても、ちゃんと私の話を聞いて好みのリサーチをしてくれていた。

 ネット販売のものだったからとかじゃなくて、忘れられていたからとかでもなくて。適当に形だけで済まそうとされた、それが寂しかったのだと今ならわかる。

 気持ちの整理が伴うからだろうけれど、別れるって結構面倒な作業なんだな……。

 直樹さんが初めて付き合った人なのだから、当然別れるのもこれが初めてで。これをひとつひとつ片付けるごとに、気持ちはすっきりするものなのだろうか。

「……まさか、わざわざ取りに来たりはしないよね」

 彼が残していったビンテージものだとかいうデニムを手に少し悩んだが、まさかあんな別れ方になった女のところに来やしないだろうとやっぱりショップバッグの中に入れた。


 その夜、サチにはちゃんと説明しておかなければいけないだろうと、直樹さんと別れたことをメールで送った。
 すると、速攻で電話がかかってくる。


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