エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 サチの送ってきたニヤニヤスタンプの意味が気になる。もしかして、高野先生、あの夜のことを喋った?

「後藤さん? どうかした? 今度は顔真っ赤なんだけど……」
「えっ! いえ、大丈夫です!」

 まったく問題ありません!
 そう意味を込めて、稲盛さんにぶんぶん手を横に振ってみせる。だけど、顔が赤くなっているのは見えなくても自覚はあって、これ以上みられないように稲盛さん側の頬に片手を当てた。

 顔を隠しながら頬杖を突き、スマホ画面に視線を落とす。

 え、えええ……高野先生……? どうして?

 どうして会いたいと言われているんだろう。何か、部屋に忘れ物でもした? いや、ちゃんと確認してから出たしそれはない。

 ど、どうしたらいいんだろう。

 もう関わることのない人だと思っていた。だから、余計に、彼が連絡を欲しがっているということの意味を意識してしまう。

 結局私は、サチへの返事を数十分遅れてから《自分で連絡します》と送り、高野先生へはとりあえず仕事が終わって落ち着いてからにしようと、頭の中を仕事へシフトチェンジした。
 

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