エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 ぐるぐるぐる、と結局、今は考えたところで答えの出ないことばかりを回っていることに気が付く。

 頭を抱えてテーブルに突っ伏し、何度も深呼吸をした。

 まず、ひとつひとつ、整理をしよう。現状できることは、もう一度、ちゃんと生理予定日から一週間過ぎてから検査薬を試すこと。今週の金曜日だ。

 もしもそれまでに生理や、その兆候が見られたら安心だ。なかったら、検査をして陽性なら……大哉さんに相談する。伊東先生とのこともちゃんと説明する。

 多分、それが一番、怖い。

 大哉さんの存在が、私の中でとても大きくなっている。たった数週間で、私は彼を失うことを怖いと思うほどに、自分の気持ちが変化しているのだと気が付いた。
 妊娠だとしたら、不思議とそのことは、怖くない。

「……そこにいるの?」

 まだぺったんこの下腹を見下ろして呟いた。もしも信じてもらえなかったら、この子には母親しか存在しないことになる。

 ――金曜日まで、あと二日。

 とにかく、まずはもう一度検査で確かめてからだ。

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