エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「か、彼氏、いたんでした?」
「いたよー、まだ付き合って半年くらいだけど」
ですよね、あんまり長く付き合えないって以前に言っていた気がする。
「そんなわけで、結婚するの。あ、仕事は辞めないけど、出産前後は長期休暇取ることになるから早めにと思って、昨日課長に報告した」
「そ……それは、おめでとうございます。びっくりしましたけど、よかったですね」
驚いたが、お祝いすべきことだ。一応内緒話の状態なので、小さく周囲にわからない程度に拍手をする。
彼女は照れ笑いを浮かべ、だがその後すぐに申し訳なさそうな顔をした。
「ありがとう。でも、あの、私ちょっと心配しててさ……」
「はい?」
「後藤さん、いつだったか体調悪そうにしてたじゃない? あんまり食事出来てなかったみたいだし……」
「……ああ、はい。二週間前くらいでしょうか」
「私も今回、つわりでしんどくて……後藤さん、大丈夫? 彼氏と付き合い長いって聞いてたし、なんか悩んでそうだったからもしかしてって後になって思ったのよ」
稲盛さんの言っている意味を把握するのに、数秒私の顔は固まっていた。
伊東先生と別れた時の体調不良を、もしかしたらつわりかもしれないと心配されていた……?
「……ちがっ、違います!」
「そう?」
いや、妊娠かもしれないのは違わないけれど、あの時のはつわりのはずがない。今その問題で悩んではいるけれど相手は大哉さんだ。