エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
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大哉さんとデートの約束をした日曜日、最初は待ち合わせの予定だったが、ドライブに連れていってくれることになり、家まで迎えに来てくれた。
彼は、仕事のことを結構色々と話をしてくれる。患者さんの個人情報に関わるようなことはもちろん一切口にしないけれど、例えば、仕事のリズムとか。何も知らないよりも、私もその方が安心できる。
外来はいつで、どの曜日は部長の手術に駆り出されることが多い、など愚痴も混じりつつ教えてくれた。勤務時間外でも、結局上司の部長に付き合えと言われれば受け持ち患者以外の検査や手術にも対応しなければならない。
インターンの時期が過ぎても、いや過ぎたからこそしがらみは多いのだろう。
患者の急変などの緊急事態以外は、比較的予定が狂うことの少ないのが日曜だそうだ。
「晴れて良かった」
運転席の大哉さんは、とてもご機嫌だ。郊外にある大きな公園に花を見に行く計画で、雨ならショッピングに切り替えることになっていたが、今日はその心配はなさそうだ。嬉しそうな横顔を、かっこいいなあと眺めていた。
「どうした?」
「えっ?」
信号待ちで私の視線に気づいた彼が、手を伸ばしてくる。頬に温かい手のひらが触れた。
「なんか、ぼうっとしてないか?」
「あっ、ごめんなさい。なんか、ちゃんとしたデートって久しぶりで」
慌てて、笑顔を取り繕う。本当は、金曜にやった再検査の結果が、ずっと頭から離れていなかった。その結果を大哉さんに、報告しようと思っている。