エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 車中で小一時間ほど、だけど思いのほかぐっすりと眠っていたらしい。大哉さんに起こしてもらった時に、一瞬自分がどこにいるのかわからなくて目の前に大哉さんがいることにすごく驚いて目が覚めた。
 寝ぼけてしばらく声も出なかった私に、大哉さんは大笑いされていた。本当に楽しそうで何よりだ。

 到着したのは、東京から高速道路を使って一時間と少しくらいのところにあるフラワーセンターだった。
 広々とした敷地に、いろんな種類の花が咲いているそうで、私は初めての場所だった。聞けば、大哉さんも初めてらしい。

「どうしてここだったんですか?」

 入園料を払って中に入ってすぐ、気になって聞いてみた。彼も初めてだというのに、どうして初デートをここにしたのだろう。

「このあいだ、桜を見てたときに。花が好きそうだったから」
「たしかに、好きです。特別詳しいとかではないけど……」
「で、花の中ではなにが好きか知りたくて。ここなら色々あるから」

 聞いてくれたら、答えるのに……。
 だけど確かにショッピングとかよりは、こういった場所の方が私は好きだ。

「どんな花が好きかって言葉で聞くより、実物の方が喜んだ顔が見られそうだし」

 そんな甘い言葉を吐きながら、彼の方こそ嬉しそうな顔をしていて、こちらの方が恥ずかしくなってくる。私は返答に困って彼から青い空に視線を移し、話を逸らした。

「よいお天気だからお花も映えますね。写真撮ろうかな」
「……あ」

 大哉さんが思いついたような声を出す。

「どうかしましたか?」
「いや。行こうか、最初にどれをみたい?」

 青空に負けないくらい爽やかな笑顔で大哉さんが私の手を引いた。

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