エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
フラワーセンターという施設名だけあって、園内の花の種類は豊富だった。一区切りごとに主役の花があり、特に広い敷地一面にネモフィラという小さな青い花が群生しているのは圧巻だ。
だけど、私が一番感動したのはモッコウバラという蔓薔薇の木で、その周囲をついうろうろしあらゆる角度から見入ってしまった。
「おっきい……実家の店にもあるんです、モッコウバラ。懐かしい」
「実家の店?」
「はい。小さな喫茶店をやってて、窓から見えるように庭を整えてあったんです。そこにモッコウバラの木でアーチが作ってあって。でも、こんなに大きくなかったなあ」
大哉さんよりも高い背丈にまで育っていて、天辺からいくつもの長い蔓が地面に向かって弧を描き、しなだれ落ちている。
その枝にびっしり、淡い黄色の小さなバラがたくさん咲いているのだ。
「きれーい。実家のお母さんに送ろうっと」
モッコウバラに向けてスマホを構え画像に撮っていると、私のスマホではなく少し離れたところで「カシャ」とシャッター音が鳴る。
まただ、と大哉さんの方を見た。
「……大哉さん、撮り過ぎです」
「さっきと花が違うし」
「だったら花だけ撮ったらいいじゃないですか」
彼は、さっきからずっと花と私をセットで撮っている。何回かは照れながらも受け入れていたけれど、いい加減撮りすぎだ。
私の画像が今日一日でいくつ増えることになるのだろう。
「一番かわいいのを背景画像に……」
「絶対やめてくださいね!」
本当に設定してしまいそうなので、時々確認しなければ。この人は、正気だろうか。
『恋の方にこじらせてたかぁ』
サチの言葉を、ニヤニヤ笑う顔と一緒に思い出してしまった。