エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

 それぞれの区画をついじっくりと見て回ったものだから、途中園内のレストランで昼食を摂り、午後も回って夕方まで楽しむことができた。

「で、私はどの花が一番好きそうでしたか?」
「どれ見ても嬉しそうにするから判断つかなかった……」

 彼が、運転席で眉根を寄せて悩んでいる。今日撮った画像を思い出しているのだろう。

「けど、花が好きなのに虫は嫌いなんだな」
「クマバチは普通に怖いでしょう?」
「刺されたことはまだないんだよな?」
「アナフィラキシーショックの心配をされてるのはわかりますが、そういうことじゃなく単純に怖いです」

 大きな藤棚があり、紫色の綺麗な花がたくさん垂れ下がっていた。香りが強いせいなのだろうか、そこにクマバチが数匹飛び回っていたのだ。

 あのずんぐりむっくりとした体系のハチは、噛まないと聞いたことはあるけれど、それが正しい情報かどうかは知らない。オスかメスかで違ったかもしれない。どちらにせよ、ぶんぶん羽音をさせながら飛んでるだけで怖いのだ。

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