エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
音も立たない、ふんわりと一瞬重なっただけのキスだ。だけど、大哉さんは驚いたように目を見開いた。
それから、嬉しそうに目を細める。
「うれしい」
「なにがですか?」
やっと喋らせてもらえた。
「雅からキスしてくれたから」
きゅっと私を抱きしめたままの片腕に力が籠る。少し苦しくて、喘ぐように口を開くとまた唇が重なる。今度は一瞬息も止まるほど、深く。
「んっ……」
強く押し付けるようなキスではないが、ぴたりと唇が合わさって離れない。歯列をなぞってから口内に入り込んだ舌が、私のそれを絡め取る。
唾液が絡む濡れた舌が絡み合うのは、どうしてこんなにも気持ちがいいんだろう。口の中で響く唾液の音も、合間に聞こえる荒い息遣いも、官能を誘い身体が甘く痺れてくる。
足の力が抜けそうで、彼の腕に捕まった。ぎゅうっとシャツを強く握りしめた時には、キスに溶かされて頭が上手く働かなくなっていた。
「……よかった」
彼が一度唇から離れて、頬や耳へと口づける場所を移動していく。
「よ、かった?」
すっかり溶けた私の口調が、どこか拙い。
「今日、時々様子が変だったから、嫌がられるかと思った」
その言葉に、今度は私が驚いて目を見開いた。彼は、私の様子をいつもよく見ている。それはわかっていたけれど、私の顔色で彼を不安にさせているとは、思ってもいなかった。