エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

「その上、あんな決意を固めたみたいな顔で話がしたいなんて言うから」
「あ、話は」
「別れ話以外なら聞く」

 彼はそう言うと、突然腰をかがめたかと思ったら私を横抱きにした。「ひえっ?」と驚いて変な悲鳴を上げてしまった私のことは意にも介さず、すたすたと歩き一つの部屋のドアを器用にあけた。

「あ」

 私の目に飛び込んできたのは、あの日入ったきりの寝室の、ベッドだ。彼の勢いから、乱暴にされるとは思っていないがふざけてベッドの上に放られるのではないかと、頭を過った。

「だ、だめっ!」

 咄嗟に考えたのは、お腹にいるかもしれない赤ちゃんのことだ。たとえ柔らかい場所にでも、勢いよく落とされたら衝撃が伝わってしまう。

 私は慌てて彼の首筋にしがみついた。

「うわっ」
「だめ! 落とさないで、赤ちゃんが……っ」

 ぴたりと彼の身体が動きを止める。彼が驚いているのがその様子で伝わってきて、私は怖くてしがみついたまま離れられなくなった。

 彼の顔を、見るのが怖い。驚くのは、当然だ。だけど、もしも怒った顔や青ざめたような顔色になっていたら、どうしよう。
 どうか、離れたくないと一層彼にしがみつく。

「……赤ちゃん?」

 呟く程度の小さな声に、びくりと肩が跳ねた。


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