メガネをはずした、だけなのに

 私が小学生の時、ピアノ教室で賢斗くんに告白をした。


 答えは保留のままで、お互い高校生になってしまったね。

 あの時、ショパンの曲が上手に弾けるようになったら……

 告白の答え、付き合ってほしいの合図、と賢斗くんが言ってたのを覚えてる。


 あの頃は、色々と難易度の高い曲にチャレンジしてたね。

 華麗な演奏効果を発揮するため、難しいテクニックも頑張ってた。


 ショパンのバラード第1番は最高難易度の曲。

 小学生の頃はまともに弾けなかった賢斗くんだけど、今はピアノが歌ってるように優しく奏でられている。


 突き抜けるように力強い旋律、そのメロディに合わせた伴奏が絶妙のバランスで体育館に響き渡っていた。

 全校生徒を一気に魅了していく技術力は、圧巻の一言。


 鍵盤の上を、右手が俊敏に移動しながらメロディーラインを表現していく。

 足下のペダルを優しく踏み込んで音色の響きと美しさを変化させ、演奏に聞き入ってる生徒たちを楽しませていた。



 賢斗くんの演奏が、私の胸を突き動かすように響いてくる……



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