メガネをはずした、だけなのに

 大好きな人が目の前から消えてしまった……


 寂しさと切なさが、私の胸を締め付ける。

 今度は、感動とちがう悲しみの涙があふれてきた。

 手の甲で何度も拭ったけど、頬を伝って床に落ちる涙が止まらないよ。


 賢斗くんを思って、私の心が泣いてる。


 切ない気持ちで、胸がぎゅっと締め付けられていた。

 賢斗くんが体育館から姿を消して拍手は鳴り止んだけど、話し声とザワザワした雰囲気で全校生徒が騒いでる。

 大粒の涙を流す私に、誰も気づいてない様子。


 ――その時、隣に立っていた相葉くんが小声で話かけてきた。


「今だったら目立たずに、体育館を出れるのでは」


「えっ……」


 告白の返事を曖昧にしたままの相葉くんが、応援してくれてる……


「かなわない恋だとわかった時から、綿貫くんと桜井くんの応援をしようと決めたのさ」


 私が好きな相手や、相葉くんの気持ちに答えてあげられない事を知っていたんだね……


「綿貫くんは気分が悪くなって、保健室へ向かったことにしよう。さあ、行きたまえ」


「でも……」


「後悔するぐらいなら行動しろ!時間は元にもどらないのだよ!」


「あの……」


「職員玄関へ急ぎたまえ、桜井くんを乗せたタクシーが行ってしまう」


「うん、ありがとう……」



 私は、隣に立っていた相葉くんに背中を押されて行動に出る……



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