メガネをはずした、だけなのに

 相葉くんが話してた通り、賢斗くんは待たせていたタクシーに乗り込む直前だった。


 私の声を耳にした賢斗くんは、素早く振り返って視線を向けてくる。

 職員玄関の階段を急いで駆け下りた私の足がフラつき、転びそうになって思わず声をあげてしまう。


「きゃっ!」


 その勢いのまま、目の前に立っていた賢斗くんの胸に私は飛び込んでしまう。


「弓子、あぶなかったぜ」


 そう言うと、賢斗くんが私の背中に両手を回して抱きしめてきた。


 私の目から大粒の涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちる。

 うれしい気持ちと安心感で、あふれ出る涙が止まらないよ。

 賢斗くんに泣き顔を見られてるけど、かまうもんか!



 自分の気持ちに素直な私が、いるだけなのだから……



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