江藤くんはループしがち
☆☆☆

5時間目の授業は数学だった。


ご飯を食べて眠い中、新しい数式を覚えないといけないと思うと今から憂鬱な気分になる。


できればず~っと昼休憩が続けばいいのになぁ、なんて。


ループしない限りそんなことは起こらないのに、淡い夢を見てしまう。


花粉でスッキリしない頭で自分の席に向かい、数学の教科書を準備する。


そうしているとサッカーをしていた男子たちが教室に戻ってきた。


汗で髪の毛がぬれている江藤くんと視線がぶつかり、ドキッとする。


そのままあたしの心臓は早鐘を打ち始めてしまった。


な、なに?


わけがわからなくて混乱していると、江藤くんが近づいてきた。


な、なんでこっちに来るの!?


どきまぎしながら見ていると、江藤くんは隣の席に座った。


そ、そっか。


江藤くんは隣の席なんだから近づいてきても当たり前だよね。


そんな当たり前のこともわからなくなるくらい、あたしは花粉にやられているんだろうか。


そう思いながら横目でチラリと江藤くんを見る。


数学の準備をしていた江藤くんが急になにかに気がついたように目を丸くしたのが見えた。


どうしたんだろう?


そう思っている間に胸ポケットに手をやる江藤くん。


確か、あのポケットに入っているのは……。


そう考えたときだった。


グニャリと景色がゆがんだ。


あ、この感じはヤバイ!


そう思っても抗えるものじゃない。


生徒たちの声がグニャリとゆがみ、江藤くんの顔もゆがむ。


どうして、また――!?
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