江藤くんはループしがち
すべてが渦を巻くようにゆがんだ後、あたしの目の前にはお弁当箱が置かれていた。


「亜美、食べないの?」


その声にハッと息を飲んで顔を上げる。


里香があたしと机をくっつけてお弁当を広げていた。


「あ、えっと?」


キョロキョロと周囲を確認してみると、2年A組の教室で間違いなかった。


目はかゆいし鼻もむずむずする。


今朝から感じている不快感はそのままだ。


スマホで日時を確認してみると、しっかり3月1日になっていた。


ただ、時刻だけが違うみたいだ。


ちょうどお昼休憩に入ったところらしく、あたしのお腹も空いている。


またループしてしまった原因を突き止める必要はあったけれど、とにかくお腹に何か入れたほうがよさそうだ。


江藤くんはあの時、胸ポケットに手を触れていた。


そして焼く1時間前に戻った。


ってことは、また生徒手帳を落としたのかな?


お弁当を口に運びながら思案する。


「難しい顔してどうしたの? まさか、また江藤くんがループしてるとか?」


里香が冗談半分で聞いてきたから、あたしは「そうだよ」とうなずいた。


「そっか、やっぱりそうなんだぁ……って、えぇ!? またループしてるの!?」


里香がオーバーに目を見開いて驚いている。
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