江藤くんはループしがち
☆☆☆

2年A組の教室は相変わらずだった。


みんな騒々しくおしゃべりにいそしんでいるし、ロッカーの上の亀吉はご飯を食べている。


そしてあたしも、里香も、江藤君もいつも通り登校してきていた。


「なにかつかめた?」


席に座った瞬間江藤君にそう質問されて、あたしは左右に首を振った。


「そっか。俺だって自分がループしてるなんて思ってないもんなぁ」


そう言って頭の後ろに腕を回す。


「もしかして、あたしの言葉を信じてない?」


「そりゃあ……」


そこまで言って江藤君はチラリとこちらへ視線を向けた。


「信じたいけど、わかんねぇ」


答えて、天井を見上げる。


江藤君の言いたいことは理解できた。


信じたいけど信じられない。


その狭間にいるんだと思う。


あと3日でまた2月3日に戻ってしまうと伝えたって、ピンとこないと思う。


「でもまぁ、緑川さんががんばってなにかしようとしてるから、俺も協力したいと思うよ」


肩肘をついてそう言われ、なんとなくドキッとしてしまう。


何気ない仕草なのに江藤君が大人に近づいていっているのを垣間見たような気がした。


あたしは江藤君から視線をそらせて「あ、ありがとう」と、ぎこちなく呟いたのだった。
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