平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
「ただいま」

ひとみと別れて港区白金台にある自宅に着いたのは二十二時。

真夏の夜は湿度の高い暑さで、玄関を入ってハンカチで額から噴き出る汗を拭う。

ひとみは『夜はまだまだこれからよ』と言って、アッシーくんを呼んだ。彼は近くにいたようで、すかさずスポーツカーで迎えに来た彼と出かけて行った。

ちょうど二階から下りてきた兄が『おかえり』と出迎えてくれる。

我が家はレンガ造りの8LDKの二世帯で、一階に両親と私、高校三年生の妹久美子が住み、旧姓高倉早苗さんと去年の六月に結婚した兄たちは二階で暮らしている。

ふたりは共に三十歳で、父から勧められたお見合いで結婚して、今では幸せそうだ。

早苗さんの父親も私の父と同じ党の議員だ。

食事はだいたい一階のダイニングルームで一緒に食べる大所帯だけど、通いのお手伝いさんがふたりいるので、母と早苗さんはほとんど家事をしていない優雅な生活を送っている。

兄は父の第二秘書として働いており、将来は議員になるべく勉強中だ。

「父さんからまたお見合い写真を渡されたって?」

私がパンプスを脱ぐのを兄は階段の白い手すりに寄りかかり見ている。兄は身長百七十三センチの標準の体型。あ、でも結婚してからウエストの辺りが幸せ太りをしているみたいに見受けられる。

「うん。まだ結婚する気もないのに」

「お前が夜遊びばかりしているから心配なんだろう。見合い結婚も悪くないぞ」

「そんなに夜遊びしていないわ。私はお兄ちゃんと違うの」

艶々に磨かれた床の上の自分のスリッパへ足を入れる。
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