平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
ひとみと別れて電車に乗り、白金台の自宅に着いたのは早朝六時前。向日葵色のボディコンシャスなスーツから通勤着に着替えていた。

早朝とはいえ、それほど早くはないからご近所さんを考えて。

こっそり玄関のカギを開けてそうっと中に入った瞬間、目の前に腕組みをした父が立っていてビクッと体を硬直させた。

「た、ただいま戻りました」

ギロッと睨みつけられ、私は首をすくませる。

「朝帰りとは何事だ」


お腹の底から出す低い声に、父が相当怒っているのがわかる。

「ごめんなさい。私にも事情があって……」

「事情など知ったことではない。若い娘が朝帰りなど、近所でどんな噂が飛び交うか」

「私は二十三歳で成人している――」

「二十三だろうが、若い娘に変わりない!」

思わず反論しようとすると、きっぱり遮られた。

「お前を見ていると心配になる。結婚すれば落ち着く。見合いを進めるからな」

「ええっ!? お父さん、横暴だわ」

「横暴だろうがお前が浮ついているからだろう? 今日は自分を見つめ直しなさい」
 話を終わらせた父はその場から離れようとリビングの方へ向かう。

「待って! 私、お付き合いしている人がいるの」

父が振り返る。

「どこの馬の骨だ。朝帰りをさせる男など、認めるわけにはいかない」

「彼と一緒じゃなかったの。同じ行員の友人のひとみよ。一度会ったことがあったでしょう?」

「覚えておらん。お前がその男を堂々と紹介できるのなら連れてきなさい。私がどんな男なのか見極めてやる」

「見極めるって、気に入らなかったらその場で酷いことを言うんでしょう?」

そんな男性は架空の人物だけど、父は誰を連れてきたとしても気に入らないに違いない。

「自信をもって紹介できないのならすぐにでも別れなさい」

父の姿がリビングに消え、私は玄関の腰かけ椅子にガクリと座る。

めちゃくちゃすぎるわ。

力任せにパンプスを脱ぐと、プリプリしながら自室へ向かった。
< 52 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop