罰恋リフレイン
こうまで言われては退社した方が良さそうだ。実際蒼くんとの待ち合わせ時間までギリギリだ。
私はカバンを掴んで立ち上がった。
「じゃあお言葉に甘えてお先に失礼します」
「おう。後悔のないようにね」
冬木さんの言葉に頭を下げるとオフィスを後にした。
待ち合わせは会社から近い国立公園の噴水広場。
僅かに数分遅れて着いた瞬間噴水が噴き出し、ライトに照らされた水しぶきがキラキラと光る。
見回しても蒼くんの姿はない。スマートフォンにも何の連絡もない。
私が遅れると連絡しなかったせいで帰ってしまったのだろうか。
一番近くのベンチに座った。
私が会いたいと言ったのにいざとなったら会うのを戸惑うし、待ち合わせ時間には遅れるし、蒼くんもさすがに呆れたのだろう。
高校3年生の時のことを想い出す。
蒼くんと公園に行って初めてキスをした。ここがあの公園とどこか似ていることが今の状況を余計に寂しくさせる。
頬に冷たいものが当たった。ぽたぽたと水滴が落ちてスカートに染みを作る。薄暗い地面に雨粒が落ちて更に濃い色を付ける。
そうだ、今日は夜から雨だって天気予報で言ってたっけ。
折りたたみ傘を忘れてしまった。雨を凌げそうなものはタオルハンカチくらいしかもっていない。
雨はどんどん強くなってきた。肌寒くなり、スカートは濡れて色が濃くなっている。
蒼くんを傷つけた罰かな。風邪を引いても甘んじて受け入れる。
膝に置いたカバンに顔を埋めると雨が体に当たらなくなったことに気がついた。
顔を上げると目の前には蒼くんが立っている。私の上にビニール傘を差しながら。
「遅くなってごめんね」
優しい顔をして私を見下ろす。その顔を見て目が潤んできた。