罰恋リフレイン






香菜と翔くんが住んでいるマンションに行くのは初めてだ。新婚の二人の家に行くのは緊張したけれど興味もあって、私はお菓子を持ってチャイムを押した。
ドアから顔を出した香菜は複雑そうな顔をして「呼び出してごめんね」と言った。

「お招きありがとう」

玄関に入ると翔くんが「どうも」と言って香菜と同じ何かを言いたそうな顔をして立っている。

「中にどうぞ」

「お邪魔します……」

廊下を進んでリビングに入ると今度は私が戸惑った。
中央のソファーに氷室さんが座っていた。

「え……」

立ち上がった氷室さんは私に軽く頭を下げた。

「私もお邪魔してます」

「どういうこと?」

困惑して香菜と翔くんを見ると「氷室さんに頼まれて……」と呟く。

「私が高橋くんにお願いして日野さんに来てもらったの」

氷室さんは淡々と言葉を発する。

「蒼のことで話があって」

「え?」

蒼くんの名前が出たことにうんざりして香菜と翔を見ると二人もお互いに顔を見合わせている。

「あの……私今日は香菜と翔くんに会いに来たから……特に氷室さんと話すことはない……です……」

氷室さんを前にして言葉が出しにくい。
ずっと氷室さんが苦手だった。何を言われるか怖くて息苦しくなる。
蒼くんとの再会と同じくらい氷室さんとの再会も避けたかった。

「少しだけ……話を聞いてほしくて」

氷室さんは立ったままの私にソファーに座るよう促す。部屋の主は香菜と翔くんなのに自分の部屋かのように誘導する氷室さんは相変わらず自分勝手だなと思う。

「私が高橋くんに連絡して日野さんを呼んでもらったの」

「氷室さんが来るって知ってたら来なかった……」

私は思わず香菜を見てしまう。私が氷室さんが苦手だって知っているのに香菜は一言もこの人が来ることを言わなかった。

香菜も私と目が合って気まずい顔を見せたけれど「氷室さんの話を薫は聞くべきだと思ったの。ごめん」と言う。

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